総額は過去最高、受診日数は減少に転じた
厚生労働省が8月28日に公表した2025年度の概算医療費は49.2兆円で、前年度比2.6%増と過去最高を更新した。ただし分解すると、延べ患者数に当たる受診延日数は0.7%減、1日当たり医療費は3.3%増で、受診延日数は2021年度以降の増加から減少に転じた。入院外では受診延日数1.6%減、1日当たり医療費3.2%増である。医科診療所では小児科、外科、耳鼻咽喉科で受診延日数の減少が大きく、未就学児では1人当たりの受診日数が大きく減った。調剤では処方箋枚数がコロナ後初めて減少する一方、1枚当たり薬剤料は5.7%伸び、そこには1種類当たり投薬日数の増加が大きく寄与している。
患者の動き:通院の間隔を空け、薬をまとめてもらう
投薬日数の伸びは、長期処方の広がりを数字で示している。通院回数を減らすことは、窓口負担だけでなく交通費や仕事を休む時間まで含めた受診コストを下げる、患者にとって合理的な行動だ。公表資料は減少要因の内訳までは特定していないが、自己負担の上乗せが続く環境で、この志向が弱まるとは考えにくい。なお小児科や耳鼻咽喉科は感染症の流行状況で年ごとの振れが大きいと注記されており、診療科によって読み方は異なる。
医師への跳ね返り:1回ごとの点数に依存する収益が削られる
再診料や処方箋料、受診時に算定するベースアップ評価料など、診療所の外来収入は受診1回ごとの点数への依存度が高い。受診日数が減れば、単価が上がらない限り直接の減収になる。しかも1日当たり医療費を押し上げた主因は腫瘍用薬や生物学的製剤などの薬剤料で、診療所の技術料が伸びた結果ではない。臨床面でも、受診間隔が空くほど状態変化の把握は遅れ、残薬や自己中断のリスクは高まる。
備え:「来院数×単価」の分解と、通院の「間」の管理
まず自院のレセプトを患者数ではなく、受診延日数と1日当たり点数に分けて月次で追う。減っているのが来院頻度か新患かで打ち手は変わる。長期処方の患者には次回予約を処方日数に合わせて確定させ、未来院者を抽出して連絡する仕組みを持ちたい。療養計画に基づく医学管理など、1回の受診の価値に見合う算定の取りこぼし点検も有効だ。感染症の比重が高い診療科では、健診や予防接種、専門外来など流行に左右されない柱の厚みが、年ごとの収益の振れ幅を決める。
一言まとめ:医療費の総額が伸びても、診療所の受診日数は減っている。来院数と単価を分けて自院を把握し、1回ごとの診療価値と受診の「間」の管理で、収益と医療の質を両立させたい。