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被災患者の「窓口負担猶予」は全国の外来に届く――令和8年熊本地震から考える、受付運用と自院の資金繰り

筆者:Sync M.D. 代表 庄野 哲夫[小児科医・CFP®認定者・1級FP技能士]

2026/9/20 [Sun] 8:00 UPDATE

11月末までの支払い猶予、県外の避難者も対象

7月28日に熊本県熊本地方で発生したM7.1、最大震度7の地震では、県内の92医療機関が被災し、8月中旬時点でも断水が続く施設があった。厚生労働省は事務連絡で、被災者の一部負担金等の取り扱いを示している。熊本市、八代市、宇城市など指定市町村の国保・後期高齢者医療の被保険者と、猶予に応じた協会けんぽ・健保組合等の加入者のうち、住家の全半壊や、主たる生計維持者の死亡・行方不明・失職などを申し立てた人は、11月末までの診療分について窓口での支払いが猶予される。期間は延長の可能性がある。被用者保険などの加入者は、被災後に他の市町村へ転入した人も対象に含まれる。

患者の動き:避難先で、手持ちの少ないまま受診する

被災者は住まいも収入も不安定なまま、避難先の医療機関を初めて訪れる。取り扱いは本人の申し立てに基づき、証明書類の提示は要件とされていない。制度を知っていれば受診をためらわずに済むが、知らなければ「払えないから行かない」と、慢性疾患の通院や服薬を中断しかねない。この特例が機能するかどうかは、受け入れる側の受付が知っているかにかかっている。

医師側の備え①:受付の手順を決めておく

該当する患者には、マイナ保険証または資格確認書で住所が対象市町村であることを確認し、申し立ての内容を診療録の備考欄に簡潔に記録する。猶予した分は患者負担分を含めて10割を審査支払機関へ請求するため、未収金にはならない。ただし入院時の食事療養等の標準負担額は徴収が必要だ。保険者によって猶予にとどまるか免除まで行うかが異なり、後日保険者から患者に確認が入ることもあるため、その旨を一言添える。国が用意した院内掲示用リーフレットを貼るだけでも、患者の受診行動は変わる。

医師側の備え②:「次は自院」を前提にした固定費の手当て

自院が被災すれば、休診中も人件費、リース料、借入返済は止まらない。被災事業所には厚生年金保険料等の納付猶予なども示されたが、支払いを先送りする措置であり、資金の穴を埋めるのは手元資金と保険である。事業用の火災保険では、地震による損害や休業損失が特約なしでは対象外となっている契約も少なくない。固定費の数カ月分の手元資金、地震特約の有無、電子カルテのバックアップと断水時の診療継続手順を点検しておきたい。

一言まとめ:被災患者の負担猶予は、医療機関が10割を請求できる特例である。受付の周知が患者の受診継続を支え、自院の被災を想定した固定費の点検が経営を守る。

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