例年より1カ月以上早い流行と、供給のタイミング
厚生労働省が8月28日に公表した第34週のインフルエンザ定点当たり報告数は1.11となり、流行開始の目安を超えた。1999年以降では2009年に次ぐ早さである。翌第35週は1.76、報告数は6,543人と前年同期の約5倍に達した。一方でワクチンの出荷は9月下旬からが中心で、国の見込みでは今季の供給量約5,190万回分のうち、10月2日時点までの出荷は6割超の約3,147万回分とされる。国は適切に使えば不足は生じないとしつつ、医療機関には必要量に見合う購入を求めている。なお、定期接種への導入が予定されていた高用量ワクチンは、供給困難のため今季の使用が見送られた。
患者の動き:「今打つか、公費を待つか」
小児や高齢者の定期接種は自治体の定める期間内でなければ公費の対象にならず、期間外は全額自己負担となる。流行の早さを受けて開始日を前倒しする自治体や、自費接種の開始を9月下旬に繰り上げる診療所も出てきた。患者は費用を払ってでも早く打ちたい層と、公費開始を待つ層に分かれ、「いつなら無料か」「今打って冬まで効くのか」という問い合わせが受付に集中しやすい。加えて発熱患者の増加が9月から始まり、接種と発熱診療が例年より長い期間重なる。
医師への跳ね返り:在庫・説明・人員の3点
第一に仕入れである。早期需要に合わせて一括で積み増すと、流行の推移や公費開始後の需要の山によっては年明けに在庫が残る。返品条件は卸との取り決め次第のため事前に確認し、前年実績と予約数を基準に分割発注するのが現実的だ。
第二に説明の標準化である。同じワクチンでも接種日によって自己負担が変わるため、自治体の公費開始日を予約システムと院内掲示に反映し、期間前の接種は自費であることを予約時点で明示する。高齢者では早すぎる接種で冬後半の効果が落ちる懸念も指摘されており、基礎疾患や生活環境に応じた接種時期の考え方を院内で統一しておくと、窓口での押し問答を減らせる。
第三に人員と動線である。発熱外来の期間が延びれば、人件費と検査キット・抗ウイルス薬の在庫負担も長引く。接種は予約制とWeb問診で短時間に回し、発熱患者とは時間帯か導線を分ける。スタッフのシフトを前倒しで組み直せるかが、今季の損益を左右する。
一言まとめ:「10月に始まり1月に終わる」前提の接種計画は今季は通用しない。公費日程に合わせた予約設計と分割発注で、患者の混乱と在庫リスクを同時に抑えたい。